December 21, 2008

Královna Alice #10
(私家版「鏡の国のアリス」)

第10章: いきどまりの庭

「ええ、わたしの国では、ふつうはどこかにたどりつくんです」

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――この庭でいきどまりです。

植物が、水が、微かに差し込む陽のひかりが、ここが終着点だと語りかけてきます。
穏やかに眠っているかのように、時間までゆっくりになってしまったかのように、ただただ、静かな庭がそこに広がっていました。
この庭に入ってきたとき通った門も、どこかに消えてしまって、先に進むどころか、戻ることさえできなくなってしまったのでした。

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「ねえ、子ネコちゃん」と、アリツェは心の中の黒猫に呼びかけました。正確には、黒猫のような自分、に呼びかけました。「もしこの冒険がチェスだとしたら、チェックメイトね。もう盤面をひっくり返すことくらいしか、できることがないの」

すると、心の中の黒猫が、ヒトの言葉で言うのです。「盤面をひっくり返すよりも賢い方法なんてたくさんあるさ。たとえば、『3本勝負だったわね、1本目は私の負け』と言って、次のゲームをはじめるんだ」

「……この冒険がチェスならそうね」と、アリツェはひとりごちました。「でも、残念なことにチェスではなかったみたい」

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疲れきったアリツェが庭の片隅に座ろうとした瞬間、足元の石畳のいくつかが剥がれていることに気づきました。その剥がれた石にアリツェが触れると、石は音もなく陥没し、そこに古い井戸のような空洞が現れました。洞はみるみるうちに深くなったかと思うと、また浅くなったり、不安定な動きを繰り返していました。それは、アリツェを誘っているようでもあり、拒絶しているかのようでもありました。「蟻の最期」とアリツェは思いました。「どこにも抜け出せず、穴へとすべり落ちる」

けれどもアリツェは、そこに飛び込む決心もできず、ただ呆然と、その空洞の淵に座ったままでいるのでした。

Category: アリツェあるいはアナイス(アナイス), Královna Alice (私家版「鏡の国のアリス」)